K 2022 - 国際プラスチック・ゴム産業展に向けた業界インタビュー

「プラズマでCO2排出量の削減が可能に」

Buske氏にお伺いします。プラズマ表面処理の環境的な利点とは何でしょうか。
プラズマテクノロジーの活用によって、環境に有害な溶剤が生産工程で不要になることです。接着や印刷、塗装の工程を成功させるには、多くの場合に材料表面を別途前処理しておく必要があります。なかでも私たちが注力しているのがプラスチックの表面処理です。ポリプロピレンやポリカーボネートなど、プラスチックの多くは無極性で、前処理なしには接着剤やニス、塗料がうまく接着しません。そのため産業プロセスでは化学的な接着促進剤、いわゆるプライマーがよく使われるのですが、80~90%は溶剤であるため環境汚染が避けられません。プラズマテクノロジーは圧縮空気と電気しか使わないため、このような化学的前処理を必要としません。

 

プラズマ処理が機能する仕組みについて教えてください。
プラズマテクノロジーのメカニズムは「エネルギーを加えると物質状態が変化する」という単純な物理原理に基づいています。気体にエネルギーを加えると、その気体はイオン化し、第4の物質状態である高エネルギーのプラズマ状態になります。エネルギー状態の高いプラズマが物質に接触すると物質の表面特性が変化します。ほぼ無極性のプラスチックに酸素・窒素含有基が導入され、表面エネルギーが高まります。これが活性化と呼ばれる現象です。表面の濡れ性が改善されて密着力が大幅に高まるため、接着剤やラッカー、塗料を長期にわたり安定的に接着させることが可能になります。プラズマシステムは通常、ジェネレーター、変圧器、各処理に的確に設計されたノズルから構成されます。

 

溶剤の使用を抑える以外に、サスティナビリティの観点からの利点はありますか。

当社のプラズマノズルは広範囲を極めて高い精度で処理でき、基材のなかで次工程が予定される特定箇所のみを前処理するのも得意です。プラスチック分野では、部品の前準備にプラズマ以外の方法を使うことがよくあります。たとえば自動車のダッシュボード製造ではフレーム処理を使いますが、それには大量のガスが必要で、その分CO2排出量も大きくなります。当社のプラズマ処理ならフレーム処理に代わって、製造工程でのCO2排出を大幅に減らすことが可能です。私たちのシステムは電気と圧縮空気だけで動くため、グリーン電力のユーザーであればCO2フリーが実現します。

 

この方法を実践しているクライアントは多いのでしょうか。
多くの生産ラインが再生可能電力100%ですでに稼働しています。環境に有害なプロセスをプラズマテクノロジーに置き換えるというコンセプトがますます支持を得ているようで、我々への問い合わせもさらに増えています。現在あらゆる産業分野でエネルギーバランスの改善とCO2削減に向けた見直しが進んでいます。また、企業に対して持続可能性を求める顧客の圧力も強まっています。コスト効率がここでも重要なポイントです。

 

企業も再生材利用を増やすよう迫られていますが、その点でもプラズマテクノロジーは有効と言えますか。

製品にある程度の再生材を使用していることが、今はサプライヤーにとってセールスポイントになっています。実際に自動車メーカーの多くが一定の再生材を内装に使っていますし、部品の再生材使用率までサプライヤーに指定するメーカーも少なくありません。再生材の使用は接着、印刷、塗装、ラベリング、シーリングその他のプロセスにも影響します。そうした背景もあり、現在多岐にわたるメーカーにプラズマテクノロジーをご利用いただいている状況です。プラズマ前処理の導入を機に再生プラスチックの利用が可能となり、最終的により環境に配慮した省資源型の生産工程が確立されるケースが増えています。

 

表面特性はプラズマテクノロジーに影響しますか。

プラズマテクノロジーを活用すれば、実際には下流工程に必要な特性を持たない材料表面が、使用できるようになります。2021年にHANNOVER MESSE Digital Editionで射出成形機メーカーのArburg社と行ったデモでは、同社が射出成形したリサイクルPP製の飲料カップを使い、しわが寄った不規則な表面にプライマーなしでUVデジタル印刷する様子を実演しました。金型から取り出した再生材のカップにOpenair-Plasma®処理を行い、印刷面を効果的に活性化することで、無溶剤インクがうまく接着する条件を整えました。その結果、無極性の再生PPで不規則な形状をした基材でしたが、摩耗や湿気に長く耐える、鮮やかでシャープな画像を印刷することができました。

これまで多種多様な素材にOpenair-Plasma®洗浄・活性化を行い、ほとんどのケースで次工程に適した表面づくりに成功しています。 この方法による表面処理の効果がもし足りなければ、PlasmaPlus®プロセスで改善します。PlasmaPlus®プロセスは、いわゆるプリカーサーをプラズマに供給し、ナノメートルの薄膜を表面に塗布することで、接着促進コーティングなどの付加機能を付与する技術です。

 

サーキュラーエコノミー(循環経済) の課題はどこにあると思われますか。
リサイクルに向けて素材を種類別に分ける作業が大きな課題になっています。プラズマテクノロジーが大いに貢献できる部分です。というのも、仕分けされる素材が必ずしも完全には均質でないからです。リサイクル過程で作られたプラスチックとオリジナルのプラスチックでは表面品質などの特性がわずかに異なります。それでは次工程に影響が出てしまいます。プラズマ処理を活用することで、下流工程がスムーズに行えるようになるのです。

Lukas Buske:アプリケーション担当主任

K 2022 – 国際プラスチック・ゴム産業展に向けた業界インタビュー:

世界は今、気候変動、環境保護、資源保存という大きな課題に直面しています。また、デジタル化によってもたらされる機会をうまく活用することも重要です。世界中にプラスチック製品があふれるなか、プラスチック産業にはその過程で主要な役割を果たすことが求められています。

気候保護、デジタル化、循環経済は、プラスチック業界の世界的見本市K2022の3大テーマでもあります。2022年秋に開催されるこの業界会議に向け、ドイツ機械工業連盟 (VDMA) ではプラスチック機械産業の代表者とその他業界関係者に週間インタビューを通じた発信をお願いしています。

お問合せ

皆様からのご連絡をお待ちしております。

ご質問やご相談がございましたら、ぜひご連絡ください。世界中のプラズマトリート専門家とともにソリューションをご提供致します。 お問合せ方法は担当者へご連絡、もしくはお問合せフォームをご利用ください。