臨床的に安全、無菌、再現可能‐医療技術分野におけるOpenair®プラズマの各種用途
Openair-Plasma® プロセスを利用すれば、硬質/軟質材料を組み合わせ、効果的に接着させることや、膜(濾過材)への仕上げ材の塗布、プラスチック表面のプラズマ機能化などを行うことができます。またプラズマ滅菌処理により、その全てが無菌状態であることを保証することができます。
長所:
- 乾式物理プラズマ処理によるシンプルなプロセス
- 信頼性の高い再現性を備えた前処理パラメータ
- PES(プラズマ発光分析)を用いた全プロセスのモニタリング
プラズマトリート社は、低圧プラズマ技術と大気圧プラズマを用いたポリマー表面の前処理に20年以上の確かな実績を有し、その実績は洗浄、接着促進の特性付与、機能性コーティングや層のプラズマ蒸着実現と、多岐にわたります。当社シリコンバレーの研究所では、パートナー企業と連携して、日々新たな表面処理ソリューションの開発に力を入れています。
プラズマ改質。医療用フィルタの成形
医療用フィルタ膜は、使用目的に最も適した透過特性と優れた効率性を備えていなければなりません。この種のフィルタ膜の多くは、房状キャピラリーを材料として製造されています。膜が安全に機能を発揮するためには、その種類を問わず、穿孔が生じるのを防がなければなりません。特に、製造中に膜をフィルタエンドプレートに設置し、確実にシーリング処理を施す必要があります。
医療用フィルタの効率的な製造:血液フィルタや酸素供給機の安全な成形。
膜は疎水性を備えているため、確実に接着するためには、接着する個所に適切な表面改質処理を施さなければなりません。Openair-Plasma® は、これまで長年にわたり、この特殊な医療技術用途において優れた性能を発揮することが実証されています。この技術を利用すれば、膜の疎水性表面において、次の工程でフィルタエンドプレートに設置する場所に正確に前処理を施すことができます。
それにより、安全な処理を施した高品質医療用フィルタを製造することができます。
挿入物の2C射出成形加工・封入 ‐ Openair®プラズマが可能にする確実な不浸透性接合
医療機器を製造する場合、限られた認証原材料以外を使用することはできません。したがって、特に2C射出成形加工の場合には、材料を組み合わせて使用することが難しくなります。しかし、Openair®プラズマを利用した活性化を施せば、硬質/軟質材料接触面を短時間で確実に接合することができます。それにより、互いに両立性を備えていない二種類の出発材料の押出加工が可能となります。
また、挿入物を封入する際にも、確実に接合する必要があります。挿入物を製造する際には、例えば挿入物をダイに設置し、ポリカーボネートを用いて封入します。ゼロ電位サイクル式Openair-Plasma® ジェットを用いて前処理を施すことにより、射出成形加工を施す前に、この種の金属挿入物に微細クリーニングを施すことができます。
また同時にプラズマエネルギーにより表面を活性化し、金属とポリカーボネートシース材の間に不浸透性の接合を施すことができます。
沈殿物が発生しないプラズマシーリング‐ ガラスバイアル用無菌キャップ
密封ガラスバイアルは、非経口輸液貯蔵用容器としては最も安全性が高いと考えられています。従来、バーナー用ガスとしてプロパン/ブタンまたは天然ガスを使用し、バーナー用ガス/酸素混合物をガラスバイアルに封入してきました。このプロセスでは、ガス混合物の組成によってはガラスバイアル内部に沈殿物や煤が蓄積し、内容物を汚染するおそれがあります。この問題に対処するため、プラズマトリート社では特殊なOpenair-Plasma® ジェット技術を開発しました。この技術は、最高のプラズマ性能を発揮し、プロセスパラメータを全て再現することが可能です。
このプロセスでは、ガラスバイアルに無菌封入を行うことが可能なプラズマエネルギーの放出を目指します。
プラズマ火炎は、従来の意味(燃焼、酸化)における燃焼過程ではありません。したがって、排ガスや煤が生成せず、火炎反応生成物による汚染が生じません。
実験技術におけるOpenair-Plasma® ー プラスチックの機能性コーティングの最適化、ペトリ皿の親水化処理。
細菌の発生や各種微生物の増殖は、酸素濃度や表面の湿潤性と特に強い関係があります。したがって実験医学においては、無極性プラスチックの表面を効果的に前処理することが極めて重要となります。プラズマプロセスを利用すれば、実験室における技術プロセス用として最も適した、さまざまな条件の表面を生成することができます。
Openair-Plasma®を用いてペトリ皿を処理することにより、表面の親水性を高めることができます。またPlasmaPlus® プロセスを補助として利用すれば、極めて薄いガラス状ナノコーティングを施すことができます。
プラズマには、さまざまな条件を指定することが可能です。そのためターゲットを絞り込んだ表面組成の制御が可能となり、したがって生体組織工学や細胞培養に関する条件を個別に調整することができます。
ラップオンチップ/バイオチップに最適な濡れ性と流動挙動を実現
マイクロ流体システムは、バイオテクノロジーや医療技術向けに開発された新しい分析手法です。いわゆるバイオチップ(ラボオンチップ。LOC)で多くの分析反応が並行して実行され、それにより信頼性の高い情報をすぐに得られるという特長があります。
マイクロ流体:ラボオンチップ(LOC)デバイス上で希望の表面特性を生成
この種の分析で鍵となるのは、表面上の液体の分布と相互作用です。担体上の濡れ性や流動挙動が決定的な情報となります。担体材料は種別により特性が異なり、PS、PP、PMMA、PDMS、COCなどのポリマーアロイは通常濡れ性が低く、また液体とも好ましくない反応があります。
低圧プラズマ技術Auroraによる表面特性の改質
低圧プラズマ技術Auroraで前処理することでラボオンチップの表面特性を変えることができ、一方では、制御可能なプロセスで表面の濡れ性を向上し、他方では、ガラス層の蒸着によって基板との相互作用を防止します。
長期安定性を備えた疎水性層
さらに、低圧プラズマ技術Auroraを用いることで、長期安定性を備えた疎水性層を選択的に表面に蒸着することができます。疎水性層を表面に蒸着することにより、マイクロ流体分離を場合によっては数年間も維持することができます。
プラズマ前処理により、信頼性の高いバルーンカテーテルを実現
カテーテルは、医療用途として、動脈の詰まりなどの症状の低侵襲治療に用られます。治療が必要な目的の血管まで動脈内を誘導され、バルーンを使って動脈の詰まりを改善します。
バルーンカテーテルの製造には、各種低圧プラズマソリューションを利用できます。
カテーテル部品の確実な溶接、シール、接合
丁寧な取り扱いを要するバルーンは、カテーテルチューブに確実に接合する必要があり、これにはレーザー溶接が通常用いられますが、最適な溶接結果を得るために、低圧プラズマでカテーテルが前処理されます。プラズマ前処理により、各種部品表面の詰まりを解消して洗浄することで非常に強力なシーリングを施すことが可能になったので、以前は使用できなかった多くの材料も今ではこのプロセスで確実に溶接されています。
薬剤コーティング
薬剤コーティングとは、プラズマ処理中に、正確な量の薬剤をバルーンにコーティングすることです。バルーンをカテーテルで体内の患部へと誘導し、バルーンを開くと薬剤が放出される仕組みです。体内の適切な患部に所定量の薬剤が安全に投与されるよう、薬剤をバルーンに確実に付着させる必要があります。
スリップコーティング――カテーテル外表面向けの疎水性コーティング
カテーテルによる血管壁への摩擦は患者に痛みとして伝わります。そこで、超疎水性コーティングをカテーテルに施すことで、カテーテルを導入する際の摩擦を減らすことができ、さらには体内でのバルーンの正確な位置決めを可能にします。
このような用途には、再現可能なプロセスによる均一な前処理が不可欠ですが、カテーテル部品へのプラズマプロセスで実現できます(高温やアーク放電を伴う他の処理方法では、カテーテルやバルーンの一部に損傷を与え、医療用途におけるリスクをもたらすおそれがあります)。
治療空間全体に非常に安定したプラズマ強度を提供する、プラズマトリート社のAuroraチューブシステム
Auroraチューブシステムは、薄肉の医療用ポリマーを高品質で活性化し、安全な溶着を実現します。低圧プラズマプロセスで反応性ガスを導入することで、機能性コーティング(スリップコーティングや薬剤コーティングなど)がポリマーに均質に塗布されます。